包丁は、研磨することで切れ味はよみがえります。刃先だけの刃付けでは刃が厚くなっている為、切れ味が悪く感じてきます。刃先から3~6mmの部分を削り取り薄くすることにより食材に食い込む様な切れ味になります。


修理前



① 刃線直し

修理前に点線部分まで水研磨機で削り取る。

刃欠けおよび写真のように刃の形状がおかしい場合は、水研磨機で修正します。刃の断面図は左図の様になります。(片刃の場合)

※形状によっては、刃渡りが数センチ短くなることがあります。


② しのぎ研磨

水研磨機を使い刃先の部分を薄く削り取る。

刃線を直したことにより、刃先が厚くなります。
このまま刃を付けても切れ味はよくありません。右図の点線部分を削り取り、刃先を薄くします。

※刃巾が狭くなるにつれて、刃先が厚くなり包丁本来の切れ味にならないことがあります。


③ はら研磨

水研磨機を使いはらの部分をハマグリ形状に削る。

しのぎ研磨で包丁のはらが直線状になります。
水研磨機で点線部分を削り取りハマグリ形状に修正します。

※ハマグリ形状にすることにより、切れ味するどく、欠けにくい包丁となります。


④ 表面研磨

荒バフで錆び落とし、表面の研ぎ目を修正。

水研磨機の目は荒いため、そのままでは錆びやすい表面状態です。錆びがある場は錆びを落とし、また表面の目を修正しさびにくい目に修正します。

※錆びの程度によりますが、錆びが奥に進行している場合は、完全に錆びを取り除くことはできなくなります。

⑤ 表面研磨

中バフで表面の目を細かく修正。


⑥ 表面研磨

仕上げバフで表面の目を細かく修正。

荒バフの目を細かくよりさびにくくするため、中バフ、仕上げバフを使用し表面の目を細かく修正します。

※刃(ブレイド)の鋼材により、錆びの出方はことなります。ステンレス刃物鋼製でも使用環境によっては錆びが発生します。

⑦ 刃付け

水研磨機で刃付け。刃付け後、皮バフでバリ取り。

⑧ 手入れ

手入れおよび防錆紙で包む。


時効割れについて

 金属の特性が時間とともに変化することを時効といいます。焼入れした鋼は時間とともに安定した状態に戻ろうとします。安定した状態にもどる時に、歪(ひずみ)を生じて亀裂が入り割れ(折れ)が発生することを時効割れといいます。

 鋼は焼入れによって金属組織がオーステナイト組織からマルテンサイト組織に変わります。しかし、100%マルテンサイトにかわるのではなく少量のオーステナイト組織が残ります。これを残留オーステナイトとよびます。この残留オーステナイトが時間の経過とともに分解するため、応力分布が不均衡(ふきんこう)になり亀裂が発生しやすくなります。

 この時効割れを防ぐ方法として、鋼材に適した焼入れ,焼き戻しを行うとともに、サブゼロ処理(焼入れ後に‐73℃以下に冷却する処理)を行うことが有効とされています。 

  鋼の特性上、包丁は100%折れないということは言い切れません。ヒビ等が確認できる場合は、使用しないでください。



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